
「頑張れ」の前に分けてあげること
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.05.10
年齢を重ねてくると、「集中すること」が難しくなるなと感じる場面が増えてきました。本を読むにしても、若い頃なら一晩で読めたものが、今では途中でネットを見てしまったり、他のことに気を取られたりして、なかなか一気に読み終えることができません。
以前、友人が「年齢とともに集中力を維持するのが難しくなってきた」と話していたのを思い出しますが、最近はその言葉に大きくうなずくようになりました。皆さんも、そんなふうに感じることはありませんか?「集中しなきゃ」と思えば思うほど焦ってしまい、かえって集中できない——そんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
ただ、だからといって「自分はダメだ」と思い詰める必要はないと思っています。僕自身、集中できないときに無理やり集中しようとしても、結局長続きしないという経験を何度もしてきました。そんなときには、流れに逆らわず、自然体でいられるような働き方や生活のリズムを模索するようにしています。
僕が目指しているのは、「集中力に依存しない働き方」です。そもそも集中力には個人差がありますし、それを前提とせずに仕事の組み立てをするのは、ちょっと無理があるように思うのです。集中力がなければ成果が出せないという仕組み自体が、実は仕事の設計ミスなのではないでしょうか。
しかしながら、現実には「精神力に頼った仕事スタイル」を続けている職場が多いと感じます。その結果、本人も周囲も気づかぬうちに疲弊してしまっている。だからこそ、マネジメント層がまず考えるべきは、「集中力を前提にする」のではなく、「集中力が切れてしまうことを前提にした仕事の設計」だと思うのです。
例えば、大きな仕事を細かく分けて、小さな目標として提示する。それだけで、ずいぶんと取り組みやすくなります。「これならできそう」という感覚があれば、人は自然と動き出せるものです。逆に、「とにかく頑張れ」と言われても、何をどう頑張ればいいのか分からず、立ちすくんでしまいます。
僕が特に違和感を覚えるのは、「とにかく頑張れ」という曖昧な指示です。抽象的な声かけでは、行動にはつながりません。管理職やマネジメントに求められるのは、「どこに力を注げば、成果が出るのか」を具体的に見せること。そしてその道筋をかみ砕いて、相手に伝えることではないでしょうか。
これからの社会は、労働人口の減少とともに、高齢者の雇用がますます重要になっていきます。そうした中で、高齢者の持つ力をどう引き出すか。それは、体力や集中力に応じて仕事を再設計することに他なりません。その設計こそ、マネジメントの仕事なのだと思います。
小さく分けること。目の前の仕事を誰もが取り組めるサイズにまで分解すること。これからの働き方にとって、当たり前でありながら、改めて大切にしていきたい視点だと感じています。そして僕自身も、もっとこの「分け方」を学び続けていきたいと思っています。
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