
五年後、十年後を想像する力
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.06.11
ときどき、意識的に時間をつくって、目の前の業務から少し距離を置くようにしています。「そもそも、これはどういう系統の仕事なんだろう?」と立ち止まって考えることが、私にはとても大切に思えるのです。
弁護士という職業は、どうしても日々の業務に追われがちです。交渉や裁判、依頼者との打ち合わせなど、プレイヤーとしての役割に集中する時間が圧倒的に多くなります。しかし、その一方で、事務所の経営者という立場もあります。両者を兼ねていることが、私たち弁護士にとっての特徴であり、また難しさでもあるのです。
私自身、規模は小さいながらも自分の事務所を運営しています。目の前の仕事だけを淡々とこなしていればいいわけではなく、五年後、十年後を見据えた舵取りが求められます。たとえば、地域の人口動態をどう捉えるか。社会のニーズはどう変化していくのか。そうしたことをふまえて、自分がどうありたいのか、どうあるべきなのかを考え続ける必要があります。
実際、五年後や十年後の姿というのは、今日の小さな判断の積み重ねによって形づくられていくものです。私が開業した当初も、将来の姿をあらかじめ正確に見通すことなどできませんでした。けれど、それで良いのだと思っています。
大事なのは「仮説を立てる」という行為です。予測を立てて、それが外れるのは当たり前。むしろ、ほとんどの予測は外れます。ですが、予測を立てようとすると、必然的に物事を「考える」ことになる。この「考える」という営みこそが、経営者にとって非常に大切だと私は感じています。
私たちは一見「考えている」ようで、実際には知識を増やしているだけ、ということがよくあります。本を読んだり、情報を集めたりすることと、「考える」ことは、似て非なるものです。将来が不確かなものである以上、分からないなりに思考し、仮説を立て、行動に落とし込むしかありません。そして、それが違っていたときは、軌道修正をすればいい。ただそれだけのことです。
一番避けたいのは、目の前の仕事だけを延々と繰り返し、気がつけば同じ場所をぐるぐると回っているような状態です。それは、現状維持のように見えて、実は少しずつ衰退しているかもしれません。
だからこそ、私は自分の価値観の基本に立ち返るようにしています。あいさつを大切にすること、感謝の気持ちを忘れないこと。地味だけれど、そうした普遍的な価値観に支えられて、自分の五年後、十年後のあり方を描く。そして、その方向性に合わせて、日々の行動を微調整していく。それが、私の経営スタイルなのだと思います。
こうしたことを考える時間は、日々の業務の中ではなかなか取りづらいのが現実です。でも、少し仕事の手を止めて、コーヒーを飲みながらぼんやりと思索にふける。それだけで、自分の中にある軸が少しずつ明確になっていく気がします。そういう時間こそ、実はとても建設的で、効率的なものではないかと感じています
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