「我慢するなんて、もう古い？」——でも、それって本当でしょうか

先日、友人からこんな質問を受けました。

「どうして、今の社会はこんなにも脆くなってしまったんだろう？」

とっさに、私はこう返していました。

「我慢することを、忘れてしまったからじゃないかな。」

自分でもなぜそんな言葉が咄嗟に出てきたのか分からなかったのですが、それ以来ずっと心に残っていて、改めてこのテーマについて考えてみたいと思いました。

私たちの仕事においても、「我慢すること」は決して否定的な意味だけではありません。もちろん、不当な我慢を強いられるのは本意ではないし、それはきちんと声を上げるべきことです。ただ一方で、我慢には「人格を磨く」といった側面もあったはずです。

ところが、最近では「我慢＝悪」というような風潮が強まっているように感じます。自己主張が重視される時代において、「我慢するなんて愚かだ」「我慢を強いられるなんて絶対にダメだ」という考え方が、少し極端に進んでしまっているのかもしれません。

でも、世の中ってそんなにシンプルじゃありません。人と人との関係は、言葉では「つながり」と言えても、実際にはすれ違いもあるし、衝突も避けられない。その中で必要になってくるのが、「歩み寄り」や「配慮」、そして「我慢」なんです。

私たちはつい、「我慢」という言葉を、自分がさせられる側の視点でしか捉えないことがあります。でも、実は自分の振る舞いや言動が、誰かに「我慢させている」可能性だってあるのです。自分の欲求をすべて実現することが必ずしも幸福ではないし、その陰で誰かが無理をしているのだとしたら——それは本当の意味で幸せと言えるのでしょうか。

我慢という行為には、社会のバランスを保つための側面もあると思います。子どもの頃、欲しいおもちゃを我慢した経験や、お菓子をねだっても買ってもらえなかった記憶は、当時は辛く感じたかもしれません。でも、そうした経験が「物事は思い通りにならない」という現実を学ぶ機会になっていたのではないでしょうか。

我慢を通じて、「選ぶ」という行為が生まれます。限られた中で何を優先するか、他の選択肢を諦めるか。そうした判断が、やがて自分の価値観や柔軟性を育てていく。だからこそ、我慢というものをもっと前向きに捉えてみてもいいのではないか——そんなことを、最近あらためて思っています。