柔らかいパンと、意志の弱い私
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.12.17
日が暮れるのが早くなりましたね。 今日の事務所は、いつになく香ばしい、優しい匂いに包まれています。
ありがたいことに、お客様や知人からたくさんの差し入れをいただきました。 机の上に並んだ色とりどりのパン。 本当に、皆さんいろいろと気遣ってくださって、感謝の言葉しかありません。
私は今、そのパンの山を前にして、ひとり静かに葛藤しています。 「鎧」を脱いで、ただの中年男性に戻った私は、本当にどうしようもないほど、パンが好きなんです。
若い頃はどうだったかというと、実はそうでもありませんでした。 食事なんて腹が満たされればなんでもいい。パンなんてどれも似たようなものだ。 そう思って、味気ないコンビニのおにぎりやサンドイッチを、仕事の合間に流し込むような日々を送っていました。
けれど、この2、3年でしょうか。 ふと立ち寄ったパン屋さんで、焼きたての香りに足を止めることが増えました。 あんなに興味がなかったはずなのに、今ではショーケースを覗き込むのが密かな楽しみになっています。
興味というのは不思議なものですね。 関心を持つと、今まで「全部同じ」に見えていた景色が、急に解像度を上げて迫ってくる。 お店ごとの酵母の香り、焼き色の違い、職人さんのこだわり。 同じような形のパンでも、ひとつひとつ違う表情をしていることに気づきます。 それはまるで、無機質に見える法律の条文の裏に、無数の人間のドラマが隠されているのと少し似ているかもしれません(……おっと、仕事の話は抜きでしたね)。
私が特に惹かれるのは、最近流行りのハードで洒落たパンよりも、昔ながらのオーソドックスで、柔らかいパンです。 ふんわりとして、少し甘みがあって。 それを指でちぎって口に運ぶとき、張り詰めていた心が少しだけ解けるような気がするのです。
そして、そこに欠かせないのがブラックコーヒーと、ゆで卵。 なぜでしょうね、ゆで卵。 特別にご馳走というわけではないのに、コロンとした白い卵が一つ食卓にあるだけで、なんだかとても豊かな気持ちになります。 殻を剥くときの無心になれる時間、塩を少し振って食べる素朴な味。 柔らかいパンと、苦いコーヒーと、ゆで卵。 これが私の、誰にも邪魔されたくない「至福のセット」です。
ただ……ここで冒頭の葛藤に戻ります。
実は私、健康診断の結果を気にして、炭水化物を控えるように心がけているのです。 40代も後半に差し掛かると、代謝というものが目に見えて落ちてきます。 「少し痩せなければ」 そう毎朝鏡の前で誓っているはずなのに。
目の前にあるふわふわのパンの誘惑に、私の理性はあまりにも無力です。 「今日だけは」「いただいたお気持ちを無下にするわけには」 そんな都合のいい言い訳を並べて、つい手が伸びてしまいます。
仕事では、依頼人の利益を守るために毅然とした態度を崩さないように必死です。 論理的に話し、感情を抑え、強い「先生」を演じています。 でも、その仮面の下の素顔は、パンひとつ我慢できない、意志の弱い情けない男なんです。
常に、欲望と体重の狭間で揺れ動く我が人生。 我ながら、なんてちっぽけな悩みだろうと苦笑してしまいます。
でも、あなたもそうではありませんか? 「ダメだ」とわかっていてもやめられないこと。 自分に甘くなってしまう瞬間。 そんな矛盾を抱えながら、私たちは日々なんとかやっている。
だから今夜は、この意志の弱さを許してしまおうと思います。 柔らかいパンを一口食べて、「美味しいなあ」と呟く。 そんな自分を「まあ、いいか」と認めてあげる。 そんな夜があってもいいですよね。
皆さんも、今日一日、本当にお疲れ様でした。 もし今、自分に厳しくしすぎて疲れている人がいたら、どうか少しだけ肩の力を抜いてみてください。 完璧じゃなくていい。三日坊主でも、誘惑に負けても、私たちは十分に頑張っているのですから。
さて、コーヒーをもう一杯淹れて、お気に入りのクリームパンに手を伸ばすことにします。 明日からまた、少しだけ頑張ればいい。 そう自分に言い聞かせながら。
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