
「一言で説明できる人は、理解している
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.06.04
弁護士という仕事をしていると、日々、大量の情報と向き合うことになります。書籍や裁判資料、依頼者の説明など、多種多様な情報が目の前に広がり、その中から何を選び、どう組み立てていくかが問われます。
もちろん、時間と体力が無限にあるのであれば、すべての情報を丁寧に読み込むことも可能かもしれません。しかし、現実はそう甘くありません。限られた時間の中でどこに焦点を当てるか、つまり「目利き」が必要になります。
さらに厄介なのは、その情報の中に必ずしも「答え」が書かれているわけではないということです。答えのない状況の中で仮説を立て、自分なりの道筋を描いていく。この作業こそが、まさに弁護士という職業の本質なのだと感じます。
こうした中で私が大切にしているのが、「情報に対する短期(たんき)」を持つことです。すべてに等しく丁寧に目を通すのではなく、あたりをつけながら読む、という姿勢。これは、経験を積むことで少しずつ身についてくる感覚だと思います。
すべての情報を漏らさず読んだからといって、必ずしも問題が解決するわけではありません。むしろ本質的なことだけに絞って考えるからこそ、物事の構造がはっきりと見えてくるように思います。「体系化する」というのは、同時に「捨てる技術」でもあるのです。
特に若い頃は、どの情報も大切に思えて、ついすべてに目を通したくなります。でも、そうすると情報に飲まれてしまい、かえって何も見えなくなることもあります。そんなとき、「これは一旦棚上げにしよう」と判断できるかどうか。それはまさに、経験がもたらす力なのだと思います。
そしてこの「勘どころ」をつかむには、何度も繰り返し情報を読み、考え、精査するというプロセスを経るしかありません。その積み重ねの中で、あるときふと、物事を「一言で言い表せる」瞬間が訪れます。
以前、ある方が「本当に理解している人は、一言で説明できる」とおっしゃっていました。若い頃の私はその言葉の意味がよく分かりませんでしたが、今では本当にその通りだと思うようになりました。理解が浅いと説明が長くなり、要点もぼやけてしまいます。逆に、深く理解した人の言葉には、スッと心に入り込むような「快感」があるのです。
誰しも、一度はそうした言葉に出会ったことがあるのではないでしょうか。聞いた瞬間に「これだ」と腑に落ちる感覚。あれこそが、情報を削ぎ落とし、本質だけを残した結果なのだと思います。
日々の経験を通じて、自分の「短期」を磨いていくこと。それは、弁護士に限らず、どんな仕事にも通じる大切な姿勢ではないかと、私は感じています。
CONTACT
お困りごとは、島田法律事務所で
解決しませんか?
お急ぎの方はお電話でお問い合わせください。
オンライン相談をZoomでも対応しています。
083-250-7881
[9:00〜17:30(土日祝日除く)]