
「口ではなく動かす」シニア論
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.05.11
労働人口が減少する中で、シニア世代の雇用は避けて通れない課題になっています。高齢になっても「できるだけ働きたい」と考える方は多く、その意欲をどう受け止めるかが、これからの社会にとって大きなテーマになると感じています。
とはいえ、「再雇用」という枠組みだけで語るのは、あまりに過去の延長線的な発想にとどまってしまいがちです。これからの時代には、新しい視点でシニア世代の活躍を考える必要があります。そんな問題意識から手に取ったのが、こちらの一冊です。
非常に学びが多く、いくつか印象に残った点がありました。特に心に残ったのは、「活躍する高齢者に求められる3つの条件」という章です。その3つとは、(1)清潔感、(2)行動力、(3)収益への意識です。以下、それぞれについて感じたことを記してみたいと思います。
まず一つ目の「清潔感」。これは年齢にかかわらず大切な要素ですが、年齢を重ねるほど、見た目の印象が周囲に与える影響は大きいと感じます。ネクタイを締めてスーツで働く時代ではないにしても、身なりが整っている人には自然と信頼感が生まれるものです。清潔感がある人は、表情にも明るさがあり、仕事への前向きな姿勢も伝わってきます。これは、私自身も常に意識したいポイントです。
二つ目は「口ではなく行動で示すこと」。これはとても共感しました。シニアになると、どうしても「指導役」としての期待が強まりますが、言葉だけで指示するのではなく、自ら手を動かし、実際にやってみせる姿勢が若手の学びを促します。実績をもって語る人には、人が自然とついてくるものです。特にITスキルに関しても、年齢に関係なくアップデートを続けている方はたくさんいます。年齢を理由に「できない」と決めつけるのは早計で、むしろ経験とスキルを組み合わせて行動できる方こそ、職場に必要とされる存在だと感じます。
三つ目は「稼ぐ意識を持つこと」。これは、意外と見落とされがちな視点かもしれません。年齢を重ね、資産にも余裕がある方の中には、「趣味の延長線で働く」という意識を持つ方もいます。でも、企業がシニアを雇用する目的は、あくまで収益への貢献です。どんなに立派な理念があっても、ビジネスである以上、成果が求められるのは当然のこと。働く本人も、自分の仕事がどのように収益につながっているかを意識することが大切です。
この本を読み終えて思い出したのは、世阿弥の『風姿花伝』でした。世阿弥もまた、年齢によってできること・表現できることは変わると説いています。体力が落ちることを前提にしながらも、それにふさわしい表現を磨いていく。これは、現代の職場においても同じではないでしょうか。
経営者側にも、年齢に応じた「仕事のデザイン力」が求められる時代です。過去の役割をそのまま引き継ぐのではなく、今だからこそできる仕事を見つけ出し、価値ある形で活躍してもらう——。それが、これからのシニア雇用のあり方ではないかと思います。
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