
カスハラは僕らの問題
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.05.22
本日は、久しぶりに医療福祉の現場で働く方々を対象とした「カスタマーハラスメント」に関するセミナーの講師を務めさせていただきました。
弁護士として、医療や福祉に関わるお仕事に携わる機会が多いのですが、そのなかで増えていると感じるのが、患者さんや利用者さん、あるいはそのご家族からの不当な要求に関する相談です。肌感覚ではありますが、ここ数年でそうした相談が確実に増えている印象を受けています。
なぜこのような状況が起こるのでしょうか。正直、私自身にも明確な答えは見えていません。ただ一つ言えるのは、「医療」や「介護」を、私たちがいつの間にか“サービス業”として捉えるようになってしまったことが関係しているのかもしれないということです。
もちろん、医療や福祉の現場でも「丁寧な対応」や「おもてなしの心」は大切にされています。ただ、それを「サービスだから当然」と思い込んでしまうことは、大きな誤解です。
医療や介護は、単なる経済合理性のもとに提供されるものではありません。そこに従事する方々の多くは、目の前の人を支えたいという純粋な想いから日々業務に向き合っています。そうした思いがあるからこそ、過剰な要求や心ない言葉に傷ついてしまうケースも多いのです。
残念ながら、どれだけ真摯に対応しても、理不尽な言いがかりをつける方は存在します。そして、そうした要求を「患者だから」「利用者だから」と黙って受け入れるしかない…という風潮が一部にあるのも事実です。
しかし、私はそれはあまりにも残酷なことだと思います。
このような状態が続けば、医療や福祉の現場で働く人が心身ともに疲弊し、やがてその職を離れてしまうでしょう。そうなれば、最終的に困るのは私たち一人ひとりです。医療や介護の担い手が減れば、私たちが受けられる支援も限られてしまうからです。
ですから、カスタマーハラスメントの問題は、医療機関や福祉施設だけの話ではありません。私たちの生活と密接に関わる、大きな社会的課題なのです。
セミナーの中では、こうした点をお伝えしつつ、「不当な要求には、断る勇気を持ちましょう」とお話ししました。たとえ相手が患者さんであっても、限度を超えた言動に対しては、毅然と対応する必要があります。そして、自分ひとりで抱えきれないときは、外部の専門家に頼ることも大切です。
「この問題は、どこかに預けてもいい」——そう思えるだけで、人は少し楽になれるものです。
最前線で働く方々が、過度な負担を感じることなく、本来向き合うべき患者さんや利用者さんにしっかり向き合える環境を整えること。それが私のような立場の人間にできる支援の形だと考えています。
これからも、医療や福祉を支える方々の力になれるよう、活動を続けていきたいと思います。
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