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ハラスメント

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パワハラ問題を解決。それだけでは一件落着にはならない

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2023.05.05

「パワハラ問題をうまく解決したのに職場がなんとなくぎこちない」という悩みを聞くことは少なくありません。問題を解決したはずなのになぜか落ち着かない。こういった状況に陥ってしまうのは、労働問題解決後のフォローが不十分だからです。

私たちは、とかくパワハラ問題を特定の加害者と被害者という2項対立的な関係でとらえてしまいます。そのため当事者で合意が成立すれば問題の解決に至ったと早計に判断してしまいます。ですがハラスメント行為は、当事者ではない周辺の社員にも間接的に影響を与えてしまいます。ですから当事者間だけ問題を解決しても不十分です。そこで職場の雰囲気を安定させる方法についてお伝えします。

その後に「ふわふわした職場」になってしまう

パワハラ問題が発生すると会社は、当事者の問題を解決させることに意識を集中させます。なんとか当事者間での話し合いがつけば、「問題が解決してよかった」と一息つきたくもなるでしょう。弁護士としても「無事に解決してくれてありがとうございます」と評価していただけるとありがたいものです。同時に「でも、これからです」ともお伝えするようにしています。

労働事件が終了して経営者がいつものように職場にでるとなんとなく社員に落ち着きがないという場面に遭遇します。社員から何か具体的な発言があるわけではないのですが誰しもが落ち着かない雰囲気です。「ふわふわした職場」といったものです。経営者からすれば、「労働事件があって落ち着かないのはわかる。でも解決したのに」となんとなくもやもやした気持ちにもなるものです。でもこれは経営者が社員の心理を理解していない証左です。このままでは同じような労働問題が発生することが多いです。

パワハラ問題の基本構造は、加害者と被害者というものです。経営者にしてみれば、その仲介役といった意識かもしれません。ですが規模の限られた中小企業では、パワハラ問題が当事者だけの問題で終わるということはないです。周囲の人も「何かトラブルになっている。どうなるのか」と気になるものです。もっとも気になっても「社長、なにかトラブルですか」と聞けるわけもありません。結果として噂話ばかりが広がってしまう危険があるので要注意です。

つまり経営者に理解していただきたいのは、労働事件は当事者だけの問題では終わらないということです。組織を成長させるためには、周辺の社員を安心させる配慮も不可欠です。とくに一方当事者が退職するような場合には、職場全体にかなりの不安が広がります。対応を間違えば「うちの社長は血も涙もない」という悪評にすらつながります。ですから労働事件の情報コントロールはいわば必須のスキルです。

退職の連鎖が生じてしまったときに

労働事件後の対処でもっともつらいのが退職の連鎖が生じてしまうときです。パワハラ問題では、紛争解決の方法として一方当事者に退職してもらうことも現実の解決としてあるわけです。被害者からすれば、いったん加害行為を目にしたゆえに「あのひとと仕事をするわけにはいかない」ということもあります。いじめの構造と同じで被害者にとっては、「赦す」ということは相当ハードルが高いというわけです。それは人間の当然の私情といえるでしょう。とくに中小企業では事業規模も限られているために「お互い関わらないカタチで勤務してもらう」というのも現実的ではありません。そこで一方当事者が退職ということになるわけですが他の社員からすればまさに青天の霹靂ということになりかねません。ときには他の社員から反発を受けることもあります。

経営者からすれば、パワハラ問題を解決すれば他の社員にも満足してもらえると考えているでしょう。それは物事をあまりにも単純化してとらえてしまっています。圧倒的人手不足の現状においてひとりの社員がいきなり退職してしまえば他の社員の負担が相対的に大きくなってしまいます。そればかりかせっかく築き上げてきた人的関係が経営者からの退職勧奨によって一方的に切断されたという批判を受けることもあります。人間は多面的な存在です。ある社員にとっては加害者と言える人であっても、他の社員からすれば「頼れる先輩」ということも珍しくありません。

現実にある社員が退職したことにともない連鎖的に退職が生じてしまうことがあります。これは医療機関においてよく認められる傾向です。職場における人間関係が濃密であるがゆえの事象です。仮に退職勧奨を実施するときには関係者から退職の申出がなされることは覚悟しておくべきです。とある事案で他の社員の退職の可能性があることを経営者に説明すると「そんなことはない」と一蹴されたことがあります。ですが他の社員から退職の申出がやはりなされて対応に苦労された方もいらっしゃいます。

こういった退職の申出がなされた場合には、いったん引きとめるべきでしょう。このとき退職勧奨した社員にパワハラなど問題行為があっても批判的に語るべきではありません。かえってリーダーに対する信頼を失わせいっそう退職の意思を強固なものにするだけです。まずは相手の話を聞くという姿勢を貫くべきでしょう。それでも退職するのであれば、いくら人手不足であっても深追いするべきではありません。無理に取り繕おうとすると双方にとって精神的な負担になります。

パワハラ問題解決後になすべきこと

ではこういった「ふわふわした状況」を改善していくためになにをするべきでしょうか。

経営者が熱く語り社員を鼓舞するというのは、ひとつの理想論かもしれません。ですが経営者に対する猜疑心があるなかでいくら熱く語ってもなかなか社員の心には響きません。むしろ取り繕っているという印象を与えることになりかねません。よく経営者からある相談として社員がいつまでも不機嫌なままというものがあります。仕事をしないわけではないがなんとなく素っ気ないというものです。これは一緒に働く人々のメンタルにも相当のプレッシャーになります。「なにか自分が悪いことをしたか」という不安につながるからです。とくにまじめな人や優しい人に限って自分の責任ではないかと重く受け止めてしまうものです。

経営者としてまずするべきことは、社員全体を対象にするのではなく社員との1対1の関係性を修復することです。社員全体に何かを語るのではなく、社員ひとりひとりに語るというイメージです。そのためには社員との個人面談をすることが必要です。社員は、それぞれ別の価値観や発想を有しています。その違いについてじっくり聞いてあげるというのはリーダーとして必要なことです。「良い。悪い」といった判断をあえてなにもせずに耳を傾けるということです。この傾聴の能力は、労働事件後の職場の安定性を実現するうえでとても役に立ちます。この能力の差異が状況改善を決定づけるような気もします。もちろん社員から本音がでるとは限りません。むしろ社員は巻き込まれるのを避けるために本音について語らないでしょう。それで十分です。大事なことは、「あなたの意見に耳を傾けている」ということを印象づけることだからです。

もっともこういった傾聴は、それほど簡単ではないです。とくに慣れていない方や労働事件がかなりハードな場合には、経営者が歩み寄ろうとしてもかえって社員から避けられてしまいます。そこで外部のコンサルタントやカウンセリングを導入するのも有効な手法です。事務所では、必要に応じてコンサルタントの方を各社に導入してもらっています。こういった方には、崩れてしまった経営者と社員の関係性あるいは社員同士の関係性の修復を担ってもらっています。その手法は、事業の内容や経営者・社員の性格などによって異なるものの「社員が語る場を提供する」という点において共通しています。こういった外部コンサルタントを導入するのは、労働事件のフォローとしても有効な手法ですから頭の片隅に入れておくといいでしょう。

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