増やすより「やめる」を選ぶ勇気

「事務所の規模を大きくしたい」と聞かれることがあります。でも、正直なところ、私はまったく興味がありません。拡大すればするほど、管理することが増えて、本当に大事なことから離れてしまいそうで。

その代わりに、私が日々こだわっているのが「効率」です。どうやったらもっと短い時間で、もっとスムーズにできるか。朝から晩まで、頭のどこかでそんなことばかり考えています。たぶん、そう考えるのが好きなんでしょうね。パズルを解くみたいな感覚もあって。

とはいえ、何でもかんでも無駄をなくせばいいとは思っていません。ちょっとした寄り道や余白があるからこそ、人間味が出てくる。スタッフとの会話の中にも、いわゆる「仕事に直接関係ない時間」があるけれど、そこから信頼関係が生まれることもありますからね。

ただ、まったく意味のない無駄もあるのも事実。なんとなく続けているルールや習慣、気づかないうちに繰り返している作業……。そういう無駄を見つけて、「これはもうやめよう」と決めるのが、私の中ではけっこう大きな仕事なんです。

スタッフにも「これ無駄じゃない？」と聞くことはあります。でも、やっぱり立場的に「無駄でした」とは言いにくいですよね。だからこそ、自分自身が現場を見ながら気づいていくことが必要だと思っています。

不思議なことに、ずっと考えていると、ふと「あれ？これって無駄かも」と思う瞬間がくるんですよね。一度気づくと、そこからどんどん芋づる式に見えてくるからおもしろいものです。

とはいえ、急に「あれもこれもやめよう」と言い出すと、周囲は困惑するかもしれません。でも、増やすことより減らすことの方がずっと難しいし、本当の意味での経営の研ぎ澄まし方なんじゃないかと思っています。

始まったものをやめるって、実は一番エネルギーがいる決断です。だけど、それを決めるのが「ボス」としての私の役割なんじゃないかと。周りの空気を読みすぎずに、「これはもう十分やった」と手放していく。その小さな選択の積み重ねが、事務所をより良くしていくんだと信じています。