
“好き”を仕事にする前に
弁護士:島田 直行
投稿日:2025.06.18
書こう書こうと思っていたのに、気が付けば忙しい業務に追われてしまい、なかなか時間が取れない日々が続いていますね。
日常のちょっとした出来事を記録していけば、いつか振り返って楽しくなるだろうと思って始めたこのブログ。ただ、実際に続けるとなると、これがまた意外と難しい。特別な用事があるわけではないのに、やるべきことがいつの間にか積み重なり、一日があっという間に過ぎてしまいます。
「こういうときこそ一呼吸」と思うのですが、実際にはその一呼吸の間に「これもしなきゃ、あれもしなきゃ」と頭の中がぐるぐる回ってしまいます。皆さんも、そんな時期を経験されたことはありませんか。
今日はふと思い至った「好きなこと」と「仕事」について書いてみたいと思います。
ときどき、「この分野が好きだから」「趣味を仕事にしたいから」という理由で起業を考える方がいらっしゃいます。そのお気持ちはよく理解できますし、「好きこそものの上手なれ」と言われるように、自分が好きなことを生業にしたくなる気持ちも自然なものです。
ただ、私はそういった相談を受けるとき、いつも「慎重になった方がいい」とアドバイスしています。なぜなら、「好き」という主観的な感情と、経営に求められる客観的な視点は、実はとても薄い線でつながっているだけだからです。
「好きだから、うまくいく」――確かにそういうケースもあります。でも、実際には、好きなことだからこそコスト感が麻痺してしまったり、逆に需要を見誤ったりするケースの方がずっと多いように思います。
好きなことにこだわるあまり、計画や採算よりも「理想の形」に寄せ過ぎてしまい、結果的にコストばかりが膨らむ。そうした状況に気づいたときには、すでに手放せなくなっている――そんな失敗談も、少なくありません。
商売というのは、自己の満足だけでは成り立ちません。「買ってくれる人がいるか」「その人はどう感じるか」といった、第三者の視点が不可欠です。そして、「好き」という感情はどうしても自分中心になりがちですから、客観的な判断を難しくしてしまいます。
自分を客観的に見ることは、とても難しいことです。「分かっているつもりでも、実は分かっていない」――そんな微妙なズレを、そのままにしておくと、好きだったものが、いつしか嫌な存在になってしまう可能性もあるのです。
だからこそ、「好き」という感情を一度冷静に切り離して考えることが大切です。「本当に事業として成り立つか」「需要はあるか」「コストに見合うリターンは得られるか」を、感情抜きで評価する知性と勇気が必要です。
好きであるがゆえに足元をすくわれてしまうこともある――そんなリスクがあることを知っておくべきです。好きなものを守るためにも、事業性をしっかり見極めて、必要であれば立ち止まる勇気を持つ。そうすることで、好きなものを大切にしつつ、ビジネスとしての持続性も手にすることができるのではないでしょうか。
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