顧客からのクレームの意味を理解することの大切さ:相手の本音を聞くには?

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2020.02.16 (更新日:2020.02.17) 経営者の方々へ

今回の記事は,一般的な意味におけるクレームについてです。どんな商売をしていてもクレームを受けることはどうしてもあります。「顧客のために」と努力と注意を払っても人のやることですからなにがしかのミスがでてしまうのは,ある意味では仕方のないことです。むしろクレームがでたときの対応方法に企業の姿勢というものが如実にでてきます。企業としては,クレームを申し立てている方が何を求めているかについて真摯に耳を傾けて対処法を検討していくことになります。

相手の本音を聞き出し、クレームの意味を理解することの大切さ

「人の話に真摯に耳を傾ける」ということは,誰しも学校教育で学んできたことです。他人の話を無視して自分の意見ばかり述べていたらまとまる話もまとまりません。むしろ周囲からは,「なんだこいつ」というマイナスの評価を受けることになります。

もっとも人の話を聞くというのは,言葉で表現するほど簡単なものではありません。そもそも私たちは,「聞く」ということについてじっくり学ぶ機会がめったにありません。仕事に就けばプレゼンテーションの仕方などを学ぶこともあるでしょうがいずれも「自分が表現する側」のノウハウです。ですから「いざ話を聞こう」となると「どうすればいいのか」とあわてることになります。

とくに誰かの個人的な考えや感情といったものは聞いて把握することが難しいものです。安易に「わかった」と思っても実際には誤解や独善的なものの評価ということになってしまうことがあります。

よく言われることですが人って自分の内面について表現することが苦手です。とくに感情となるとさらに難しくなります。うれしい,悲しい,つらいといった様々な感情がありますが実際には感情の前に言葉があります。「うれしい」といった言葉を知ったからこそ「この感情をうれしいというのか」とわかることができます。言葉を知らなければ,自分の感情を表現することができません。その意味では自分の内面は,いつも誰かが用意した言葉でしか表現できないわけです。極度に個人的なものである「感情」がオリジナルなものとして表現できないわけです。

ですからクレーム対応においても相手が主張していることが,そのまま相手の望んでいるものとは限りません。ここはクレーム対応に限らずコミュニケーションにおいて注意しておかなければならないところです。相手が感情的に話をするとこちらもあわててしまって即時になにか解決策を提示しようとします。相手の求めた本音と違うものを提示してしまってさらに問題がこじれてしまうことも多々あります。

クレームの意味を理解するための具体的な質問方法

問題は,どうやって相手の本音を把握するかです。よく「相手の気持ちになって」など言われますが,それができれば正直なところ誰も苦労しません。いくらこちらが考えてみても相手の本音を言い当てるのは容易なことではありません。そもそも私と相手はまったく違う人格です。知識も価値観も違う二人が出会って相手の言葉にならない願望などを知るというのは常識的に考えて不可能に近いでしょう。

私も交渉に先立ち相手が何を考えているのかをシュミレーションします。ですがあくまでシュミレーションだけで留めています。可能性を超えて「きっとこうだ」という確信で交渉に臨むとたいてい予想外の展開になってグダグダな結果になってしまいます。これは明確に悲惨な結末になるのです。

ですから相手の考えなどいくら推測してもわからないというところから始めなければなりません。いかに心理学や交渉術を学んだところで実務でいきなり結果が変わるということはないでしょう。

では相手にどうやって聞くか。いきなり「あなたの本当の狙いはなんですか」と直球で質問したらかえって反発を受けるのは目に見えています。「そんなやついないよ」と感じられるかもしれませんが実際には同じようなことをしているケースがあります。

クレームを述べるさいには,みんながみんな論理的に冷静に語ることができるわけではありません。感情的になってとりとめのない苦情を五月雨式に語られることも得珍しくありません。「この人,いったいなにをいいたいの」と首をかしげたくなるときもあるでしょう。おそらく話している本人もよくわかっていない。

こういうときに相手に対して「いろいろご迷惑をおかけしているようで申し訳ありません。今一番お困りのことはなんですか」と質問してみるのがシンプルで本音を聞きやすいフレーズです。本人としては「あれもこれも言いたい」という気持ちが前のめりになって本当に自分が困っていることが分からなくなってしまうときがあります。

なにかに困っているときってすべてのトラブルが同じくらい重要に感じてしまって優先順位がつけられなくなります。すべての問題を同時に解決しなければと誤解してしまうがゆえに周囲が見えなくなることがあります。そこで「一番困っていること」という質問を投げかけることで無理にでも優先順位を考えてもらうことにします。どういう順番をつけたかが大事なのではなく自分で優先順位を決めたということが大事なわけです。そのうえでまずは優先度の高い課題から対応していけば満足度を高めていくことができます。相手としても「一番困ったことに対応してくれている」という安心感も手に入れることができるでしょう。