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解雇・退職

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辞表をだしてきた社員。そこは引きとどめるべきか

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.06.03

社員が辞表をだしてくれば、経営者にとっていいものではない。予想していたものもあればまったく予想していなかったものもあるであろう。たいていは予想していない社員から青天の霹靂のように辞表が提出されるものだ。今回は「退職」ということについて少し整理してみたい。

本当の退職理由など誰にもわからない。社員自身にとっても

いきなり辞表をだされた経営者としては、あわてて「どうした。なにか問題でもあったか」と質問攻めにすることになる。人手不足のなかやっと育ててきた社員がいきなり離脱するのはやはりつらいものがある。とりあえずガス抜きをして場を納めようとする経営者の気持ちは痛いほどわかる。そういうときに退職の理由をいくら聞いても社員からは明確な回答はないものだ。「キャリアアップのため」「家族の介護の負担が」などいろいろ理由はでてくるもののたいていは「とりあえず見繕った回答」ということになる。会社に不満があっても大人の対応として不満の理由をありのまま話す人は普通いない。小さな町であれば「トラブルになって退職した」という噂になっても困るのでなおさらだ。経営者を傷つけないような理由をとりあえず述べて立ち去ることになる。

ここまではたぶん誰しも「そうだよな」と言うことになる。でもさらに踏み込んで言えば辞表を出す側としても明確な退職理由というものをもっていないことも少なくない。人間の判断というのは、自分で考えるほどに論理的で冷静なものではない。「ここで働くのは無理。きつい」という感情的な判断が先行してしまい「なぜきつい」のかについて言語で表現することがなかなか難しいものだ。だから退職する人に「本当の理由を教えてくれ」といくら質問しても具体的な回答はない。

これまで労働事件の現場にいていろんな退職を目にしてきたがやはり圧倒的に多いのが他の社員との関係が構築できなかったケースが多い。賃金だけが直接的な理由になっているケースは個人的には目にしたことがない。むしろ「賃金は厳しいけど職場の雰囲気がいいから」ということで踏ん張っている人こそいる。あたりまえだが人生において職場で過ごす時間はあまりにも多い。その時間が緊張をともなうようなものだと人生がだいなしになってしまう。職場の人間環境というのは自分だけの努力で改善できるようなものではない。しかもいちど壊れてしまうと事後的に修復するのも容易ではない。結果として退職しかないということになってしまう。

人手不足から引き留めた。だがそれでも

「辞表をだしてきた社員を引き留めるべきか」というのは経営者にとって永遠の課題だ。周囲の経営者を見ると「いちどだしてきたら期待していた人材でも引き留めない」というセオリーの人が多かった。ところがこの数年でずいぶん傾向が変わった。いちど退職されると欠員補充ができないという人手不足の現実があるからだ。方針を変えて「とりあえず引き留める」という方もそれなりにいる。どちらの方針が正しいという問題ではない。それぞれの経営者の哲学に基づいて判断をするべきことだ。ただ現実的な問題としていったん辞表をだした人を引き留めてうまくいくというのは容易なことではない。むしろギクシャクした人間関係だけが残ってしまいよくない。

経営者が引き留めようとするときには、あたりまえだが本人の述べる不満を改善しようとする。経営者としては、そういった不満を改善すれば社員は満足すると安易に考えがちだ。先ほども書いたように本当の不満は言語化されたものではない。本人としてもたいてい何が不満なのかよくわからず「ただ不満がある」というのが実態に近い。だから具体的に表現された不満に対応するだけでは本当の不満に踏み込んでおらず問題の解決にならない。

つまるところ誰にとっても100%満足するような職場はない。経営者が目指すべき職場は、みんながそれなりに満足するような職場であろう。そのなかで特定の社員の要望だけ実現するような姿勢を見せればやはり他の社員からすれば「自分たちは粗末に扱われている」という印象を受けることになる。しかも引き留めた社員もやはり満足できずにしばらくすると退職をする傾向が強い。いちど会社に対して抱いた疑念といったものを事後的に払拭することは容易ではない。

あくまで個人的な意見ではあるがやはり辞表を持参した社員を引き留めることは、よほどの覚悟がない限り避けるべきであろう。

辞表をだした社員。引き継ぎを拒否された場合には

退職時には、引き継ぎをしてもらわなければならない。たいていは引き継ぎをやってくれるものだが会社とトラブルになって退職する場合には、応じてくれない場合もある。会社は、退職日まではもちろん引き継ぎを明示することができる。中小企業の場合には、事業に関与する情報を特定の社員がすべて把握しているということがある。なかには「社員しか取引先を把握していない」「PCのパスワードは社員しか知らない」というケースもある。もめた社員は、こういった引き継ぎをあえてしないということもありうる。例えば「退職日まで有給を利用します」と言われれば、もはや引き継ぎを命じることはできない。あとは会社にて自力で対応していくほかない。

言いたいのは社員に情報を独占させるようなシステムになっていないかということだ。中小企業の場合にはあまりにもそういったケースが多い。労働事件においても「あの社員には退職して欲しい。その前に引き継ぎだけは実施してもらいたい」という無理な要求をされる方もいる。会社から退職を打診しておきながら引き継ぎまで要求するというのはあまりに虫のいい話に社員には聞こえるだろう。労働事件にまでなった事案では大抵引き継ぎなどなされないまま退職ということになる。だからこそ日頃のビジネスのシステムが重要になってくる。

退職については、「社長、辞めた社員から内容証明が届いています」も参考にしていただきたい。

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