083-250-7881[9:00〜17:30(土日祝日除く)]

tel:083-250-7881[9:00〜17:30(土日祝日除く)]

tel:083-250-7881[9:00〜17:30(土日祝日除く)]

後継者・幹部育成

後継者・幹部育成

社労士の先生が「そんな話は聞いていない」と経営者から詰め寄られないために

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.06.03

昨日は社労士の先生方との定期的なオンラインでの勉強会を実施。検討内容は、就業規則の「内容」ではないところの問題について。先生方にとって就業規則の作成は、メイン事業のひとつだ。就業規則の「内容」については法律の改正も含めてブラッシュアップを日々尽くされている。だが少し待って欲しい。就業規則は、たんに内容だけではない。その周辺事情というものもある。そこをフォローしておかないトラブルに巻き込まれてしまう。今回の本質的な狙いは、「こんなことでトラブルに巻き込まれないよう」というひとつの注意喚起だ。

過半数代表者の選出。あたりまえですがきちんと記録ありますか

「社長、辞めた社員から内容証明が届いています」のなかでも触れているが就業規則は、内容と運用のふたつの車輪で成立している。いくら就業規則の内容を作り込んでも運用で失敗すれば就業規則の効力が否定される可能性がある。労働事件では、就業規則の内容のみならず運用も争われる。先生方は、とかく「いかにして就業規則の精度を高めるか」ということに意識を向けてしまいがちだ。就業規則は、労働事件において会社の主張を基礎づける法的根拠になる。精度が高ければ会社としても積極的な反論をすることができる。就業規則を研究し続けることは、適切な労使関係を構築するうえで必要なことであることに間違いはない。ただし就業規則をブラッシュアップするにしてもこだわりはじめたら終わりがないのに等しい。しかもいくら内容にこだわっても運用に失敗すれば意味がない。

時間外労働を制限するために就業規則の規程を変更する場合もあるだろう。このとき許可制など導入すれば労働者にとっては不利益な変更ということになる。就業規則の変更においては、労働者の代表者の意見を聞く必要がある。実務的には労働者の過半数を代表する者の意見を聞くことが多いだろう。労働事件においては、「就業規則の変更時に労働者の代表者の意見が聞かれていない」と主張されることが珍しくない。つまり経営者の意向に沿った社員が勝手に代表者を名乗っているだけであって実際には代表者として選定されたプロセスがないということだ。実際のところ経営者と通じた古参社員が代表者としてサインしていることが珍しくない。

先生方としては、事後的なトラブル回避のために代表者の選出プロセスについては確認しておくべきだ。できれば事後的に検証ができるようにいかなるプロセスで選定されたかがわかるように議事録などを作成しておくといい。こういった作業は、すぐに必要なものではないために手間のかかる面倒なものだ。ただし面倒なものこそ将来のトラブルを防止することになる。労働事件は、誰も予想しないところで生まれるものだ。たいてい「これはトラブルになるかも」と感じたときには、すでに手遅れで企業としてできることも限界がある。

就業規則の周知性の確保。そこまできちんとフォローされていますか

就業規則の運用という観点からすれば、周知性の確保も忘れてはいけない。労働事件においては、就業規則の周知性についても争点のひとつになる。争点のひとつというよりもたいていの事件では指摘されるものだ。「社長が保管していて自由に読めなかった」「開示を求めたら会社に拒否された」「戸棚になると言われてもどこにあるのか誰も知らなかった」など。こういった主張がされたうえで会社としてきちんと周知していたということを証拠とともに示していくのは難しいものがある。いくら「開示を求められたら開示するつもりだった」と反論しても開示した事実がなければ周知性が否定されるベクトルに動くであろう。

先生方としても気をつけていただきたいのは、この周知性の確保について誰が実施するかということだ。「それは事業主に決まっている」というのは当然の回答ではあるが、それだけで話が終わるものではない。例えば就業規則の変更をスポットで依頼を受けたとしよう。このとき就業規則を整えたうえで「ご依頼内容はここまでです。社員の方への説明は社長で実施してください」と話すときもあるであろう。先生方としては、納品までが受注内容であって社員への説明や周知性は事業主の責任と考えているはずだ。だが実際に労働事件になって周知性がないとして争われると経営者から「社員への説明まで依頼したはずだ。責任をとれ」と根拠なき批判を受ける場合もある。「そんな馬鹿な」という気持ちにもなるだろうが、現実とはそういう理不尽なものばかりだ。

こういった批判を受けないためにもできれば、就業規則の社員への説明及び周知性の確保までできるだけ引き受けて実施されるべきだ。もちろん費用をもらって。周知性の確保としては、できれば社員全員に写しを渡して受領書をもらうのがベストであろう。あるいは就業規則を各自にメールして送信履歴を確保しておくという方法もある。いずれにしても「全員に渡した」という証拠を確保しておくことだ。いずれにしても「これは誰の責任で実施するのか」というのは明確にしておかなければ、あらぬ批判を受けることになる。

責任の範囲を明確にするには、依頼を受けるときに契約書をきちんと作成しておくべきだ。何をどこまで引き受けたのかを契約書にしておくということ。それだけで事後的な責任を回避することができる。あいまいなまま引き受けるのだけは避けなければならない。仮に納品だけで終わるのであれば、従業員への説明や周知性の確保について会社にて実施するべきことを記録で残るような形で会社に伝えておく。たんに書面にして渡すだけでは「聞いていない」と言われかねない。説明を受けたことの確認書をもらっておくのがベストではある。そこまでしなくてもメールで履歴を残しておくという方法もある。

勉強会は社労士の方であれば誰でも参加可能です。ぜひご参加ください。

BLOG一覧へ戻る

CONTACT

お困りごとは、島田法律事務所で
解決しませんか?

お急ぎの方はお電話でお問い合わせください。
オンライン相談をZoomでも対応しています。

083-250-7881
[9:00〜17:30(土日祝日除く)]