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ハラスメント

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【社内でハラスメント事案が発生したら】迅速かつ真摯な対応が解決を左右します

松﨑 舞子 弁護士:松﨑 舞子 投稿日:2023.02.17

パワハラ、セクハラ等のハラスメント行為の定義の明文化や、すべての企業へのパワハラ防止措置の義務化により、会社にはハラスメント事案発生時の適切な対応がより一層求められるようになっています。
会社が対応を誤れば、会社も被害従業員から責任追及を受ける場合があります。
本ブログをお読みいただくことで、ハラスメント事案発生時に共通する対応のポイントを知ることができます。

従業員からハラスメント被害の相談が。迅速かつ正確な事実調査が鍵。

会社がハラスメント被害の相談を把握した際の対応は、①関係者からの事実調査、②調査結果に基づく事実認定、③認定事実に基づくハラスメント該当性の検討、④検討結果に基づいた措置という経過をたどります。
時間の経過とともに、関係者の記憶は薄れ、証拠は散逸しやすくなります。そのため、初動の事実調査を迅速かつ正確に行うことが重要です。
まず、被害従業員からの調査については、被害従業員からの信頼獲得を意識して対応に当たる必要があります。被害従業員は、被害相談をしたことで不利な待遇を受けるのではないか、社内での自分のプライバシーは守られるのだろうか、といった不安を抱えています。
令和元年の法改正により、ハラスメント被害の相談をしたことに対する解雇その他の不利益な取扱いは法律上禁止されました。また、会社には、相談への対応またはそのハラスメントに関する事後の対応に当たっては、相談者、行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずることが法律上義務付けられています。
相談担当者において、このような会社の立場を説明することで、被害従業員に安心感を持って調査に臨んでもらえるようになります。
特に初回聴取の段階では、被害従業員の話を十分に受け止め、信頼関係を形成することも必要です。相談担当者が聴取をしながら評価や判断を行うことで、被害従業員において話をしづらい状況になるリスクがあります。
被害従業員からの聴取と並行して、ハラスメント行為の客観的な証拠を確保することも重要です。加害従業員がハラスメント行為を否定する可能性も考慮し、メールやSNSの履歴、写真といった形に残る証拠が散逸しないように早期に確保することに努めましょう。
次に、加害者とされた従業員からの聴取についても、迅速に行う必要があります。加害者とされる従業員においてもプライバシーの問題は生じるため、聴取は他の従業員に分からない場所、時間帯に行うといった配慮が求められます。聴取の段階でハラスメント行為と決めつけて聴取をしない点は、加害者とされる従業員との関係でも同様です。加害者とされる従業員の説明や主張も十分に聞き取り、弁明の機会を与えるようにします。
当事者からの聴取を進める中で、第三者からの聴取の必要性が生じた場合には慎重に対応する必要があります。聴取を行う場合には、被害従業員のプライバシー保護の観点から、被害従業員に承諾を得る、第三者に対して社内外に事実の漏洩をしないよう求めるといった対応をとることになります。

調査、検討期間中の従業員への配慮をどうするか。

ハラスメント行為の事実調査やハラスメント該当性の検討の期間中は、被害の拡大を防止し、被害者のプライバシーを守る措置が求められます。当事者同士が直接かかわらないよう、事業所や部署の配置換え、席替え等を行うことが考えられます。

被害者の意向により配置換えや席替えまでは行わない場合でも、加害者とされる従業員に対して一定の限度を超えた関わりを禁止する、2人だけにならないようにするといった配慮は必要です。

小規模な会社では、当事者の分離が困難な場合もあります。ハラスメント行為が悪質かつ明確な場合は、加害者とされる従業員を自宅待機とする、被害従業員を身体的・精神的不調の療養を目的とした休職扱いとするといった対応も検討します。

ハラスメント該当性の判断は専門家にも相談を。

パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントについては、法令上定義が設けられています。
<パワーハラスメント>
(労働施策総合推進法30条の2第1項)
職場において行われる、次の①から③までの3つの要素を全て満たすもの。
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境が害されるもの

パワーハラスメントについては、代表的な6つの類型が厚生労働省の告示により列挙されています。
⑴身体的な攻撃
⑵精神的な攻撃
⑶人間関係からの引き離し
⑷過大な要求
⑸過少な要求
⑹個の侵害

⑷過大な要求、⑸過少な要求については、従業員の能力等を考慮した業務配転、業務上の指導との線引きが難しい場面が出てきます。事後的に評価や弁護士等への相談ができるよう、業務指導の根拠、内容については、記録に残しておくことが望ましいと考えます。
⑹個の侵害については、従業員の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該従業員の了解を得ずに他の従業員に暴露することもハラスメント行為となります。どのような情報が機微な個人情報に該当するのか、従業員への配慮のため、どの範囲までの伝達が許容されるかの判断が悩ましい場面が生じえます。
また、被害従業員の精神的苦痛に関する判断基準について、裁判所は、被害従業員の主観ではなく、「平均的労働者」を基準としています。この点も、パワーハラスメント該当性や該当する場合の補償の範囲の判断が困難となる要因です。

<セクシュアルハラスメント>
(男女雇用機会均等法11条1項)
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、
労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されること。

セクシュアルハラスメントについては、ハラスメント行為を見聞きした周囲の従業員において精神的苦痛が生じ、業務遂行に支障を来す場合もハラスメント行為に該当します。
ハラスメント行為が当事者同士だけの問題ではない点に注意して該当性を判断する場面があることに留意が必要です。

<妊娠・出産・育児休業等ハラスメント>
(男女雇用機会均等法11条の3第1項、育児介護休業法25条1項)
職場において行われる上司・同僚からの、妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動により、
妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されること。

妊娠・出産・育児休業等ハラスメントについては、女性の産休、育休に関する行為(マタニティハラスメント)のほか、産後パパ育休に関する行為(パタニティハラスメント)、介護休業に関する行為(ケアハラスメント)も対象になります。
ハラスメント行為者については、上司からのみでなく、同僚からの言動もハラスメント行為の対象です。
女性の産休・育休に関する上司と部下との問題にはとどまらないという認識を持って、ハラスメント行為該当性の判断をする必要があります。

このように、法令上定義がなされているハラスメント行為でも具体的に該当性を判断することが難しい場面も生じえます。判断に迷う場面では、弁護士等の専門家への相談もご検討ください。

加害従業員の処分と被害従業員への対応のポイント

ハラスメント行為に該当すると判断した場合には、就業規則に従って加害従業員に対して処分を行います。

悩ましいのは、被害従業員としては加害従業員が会社を辞めなければ勤務を継続できないところ、処分としては懲戒解雇に至らないケース、あるいは、ハラスメント行為と認定するに至らなかったケースです。

被害従業員に対しては、加害従業員に対してなされた処分あるいは調査内容及び検討結果を報告するとともに、被害従業員が勤務を継続するためのサポートを継続します。

もっとも、被害従業員としては納得ができず、被害従業員自身が退職を申し出るケースもあります。このような場合でも、退職金の上乗せや再就職先の斡旋など、可能な限り被害従業員に配慮を行うことで、被害従業員と会社との関係悪化の防止につながります。

会社の対応が不適切な場合等には会社が責任追及をされることがあります。

ハラスメント行為について被害従業員が法的な請求を行う場合、加害従業員にとどまらず、会社が責任を追及される場合があります。
加害従業員のハラスメント行為が不法行為に該当し、その行為が事業の執行についてなされた場合には、会社に対して使用者責任が追及されます。
裁判例では、取締役の支店長に対するセクシュアルハラスメント行為が、支店長を退職に追い込むほどのものであり、加害者である取締役の行為を放置していた会社に対して使用者責任が認められています。
使用者責任と並行して、会社が労働契約上の付随義務である職場環境配慮義務(安全配慮義務)に違反した場合には、債務不履行責任を追及されることもあります。
裁判例では、約3年にわたる上司や同僚からのいじめ行為を防止する措置を取らなかった職場に対して、安全配慮義務違反が認定されています。
被害従業員からの直接の責任追及のほか、労働局から指摘を受ける場合もあります。都道府県の労働局にはハラスメントの相談窓口が設置されています。被害従業員において会社の対応が不十分であるとして窓口に相談を行った場合には、労働局から事実関係の確認を求められる可能性があります。


法改正が進む中、ハラスメント事案が発生した場合、会社にはより一層丁寧な対応が求められるようになりました。特に初動対応が問題解決の要となります。事案が発生した場合は、早期の段階でのご相談をお勧めいたします。

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