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解雇・退職

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【3年3割離職の現実】採用で失敗しないための外せない3つの視点

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2023.03.03

「コストをかけて新人を採用したら3ヶ月もしないうちに退職された」と頭を抱えるひとに出会うことは労働事件を担当していたら少なくありません。厚生労働省の公表した資料によっても新卒採用者の約3割が3年以内に退職しているという衝撃的な事実が明らかになっています。「採用できたら安心」という時代ではもはやないということです。

これまで採用直後の離職に関する労働事件に関与してきました。今回のブログでは、こういった採用直後の労働事件を防止するために採用において注意するべきところを企業側の視点で整理しています。一読していただければ、「応募者数を増やすだけ」の採用方法から脱却して安定した組織作りに向けた施策をとることができるはずです。

採用対策のKPIを応募者数に設定しない

厚生労働省の公表資料によると令和2年度における新卒就職者の3年以内の離職率は、高卒で36.9%、大卒で31.2%ということになっています。例年に比べて低下傾向とされるものの約3割が3年以内に離職しているという現実には驚くばかりです。

こういった若手の離職は、人手不足による廃業という厳しい現実につながっていきます。日経新聞の記事によれば、人手不足が原因の倒産が2022年は昨対比26%増とされています。

参考:日本経済新聞「人手不足で倒産」26%増 経済再開受け採用難再燃

こういった早期の離職は、企業にとって経済的な負担としても重くのしかかります。一般的に新卒採用に要するコストは、約97万円と言われています。離職となれば、採用コスト+離職時までの賃金+育成のために要した人件費などがすべて失われることになります。これは経営資源の限られた企業にとって相当の負担になるでしょう。「今回は縁がなかった。次に期待しよう」というのであれば、どれほど収益を確保しても抜け落ちていくばかりです。

新卒者が早期に退職する要因の典型的なものとして上司・先輩からのパワハラがあります。解決をするために企業として解決金を支払う場合もあります。入社して3ヶ月程度の事案でしたが解決金として40万円近くの慰謝料を支払ったケースもあります。これではいったい何を目的として求人をしたのかわかりません。

離職の原因を一言で説明すれば、採用のミスマッチということに尽きます。企業として求めるような人材ではない方を採用してしまうがゆえに「これは違う」ということで離職につながってしまいます。ですから対策としては採用のミスマッチをなくすということになります。言葉で表現すれば単純ですがいざ実行するとなるとかなり難しいことです。

採用のミスマッチが起きやすい理由は、採用のKPIを応募者数に設定してしまうことです。企業は、自社の文化にあった人材を確保したいと切に願っているはずです。ですが圧倒的な人手不足から「応募がない」ということでひたすら応募者数の増大にばかり意識を向けてしまいます。採用戦略がたんに応募者数の確保になっているということです。しかし仮に100名の応募があっても自社に合わない人を採用すれば労働事件の火種を手にするだけかもしれません。逆に応募が1名でも「これだ」という人であれば採用の目的を達成できます。つまり応募者数はKPIとならないはずです。それなのに応募数者はわかりやすい数字であるがゆえに重宝され過ぎています。この点について目を覚まさなければいつまでもひたすら求人広告の費用ばかりかけることになります。

応募者数の確保という観点から求人媒体の性質を考えてみましょう。かつて求人といえばハローワークが地方では唯一の媒体といっても過言ではありませんでした。ですがハローワークの求人は、申込者が登録するために手間がかかります。この手間が応募の障壁になるとしてより応募の簡単な求人媒体が用意されるようになりました。企業も「応募者数を確保するためにより応募を簡単に」と考えるようになりコストをかけてひたすら求人媒体を増やしてきました。

ですがここで立ち止まって考えてみましょう。企業は、ハローワークの登録すら面倒と考えるような人を本当に求めているのでしょうか。私は、そうとは考えられません。失礼ながら履歴書ひとつ用意することを億劫に感じる方が中小企業で他の人と協調しながら何かを達成できるとはなかなかイメージできません。勤務先を選ぶというのは、人生において重要なイベントのひとつであるはずです。手軽さだけで選択されるべきものではないでしょう。

私は、原点回帰でハローワークによる求人にこそこだわるべきと考えています。個人的な経験からしてもハローワーク経由で応募してきた方は、仕事に対する熱意が違います。「なんとか仕事を手に入れなければ」という意欲を感じます。もちろん他の求人媒体を否定する気はないのですが、相対的な評価として参考にしてください。いずれにしても応募者数にこだわるような採用戦略は取り入れるべきではありません。たくさん応募があるからいい人材に出会えるというものでもないです。

ハローワークの求人についていい本もでています。いたづらに求人媒体を増やすのではなくハローワークの求人情報を見直すことから始めましょう。仮に有料求人媒体を利用する場合には効果を測定したうえで利用方法を検討してください。

なお有料求人媒体については、近年業者とのトラブルが増えています。無料と聞いて安易に依頼したら一定期間の経過後に有料になって費用を請求されたというものです。何事も無料という言葉の裏には何かあるものです。利用する場合には、契約内容について注意してください。

イメージと現実のギャップを縮めるようにする

ハローワークの求人において特に注意するべきものが初任給の設定です。特に若手の社員を確保したいときには初任給にはこだわるべきです。他の企業と比較して見劣りすれば、それだけで選考対象から外れてしまうために他の努力が全て否定されてしまいます。

昨今では人手不足と物価高という二重のインパクトから賃金アップが至上命令のようになっています。この流れを止めることはできないために初任給アップは現実的な課題として取り組まざるを得ません。「初任給をアップしたら他の社員もベースアップしなければ」などと言って消極的な経営者もいますが、そんな悠長なことを言っているわけにいきません。大企業を中心に賃金アップはどんどん進んでいます。なんとか初任給をアップしてせめて見劣りしないレベルまでにしてください。

脱線しますが初任給が低い会社に限って経営者が「やりがい」「達成感」といった道徳的な表現を多用する傾向があります。おそらく賃金ではない魅力を伝えたいのでしょうが意味のあることではありません。こういった発言は、十分な賃金を支払っているからこそ社員に響くものです。低賃金のままで道徳的な発言をするのは、たんに労働者から搾取しているのと同じでしょう。「つべこべ言わずに働け」と伝えているのと同じですから。こういう会社はたいてい労働事件で揉めてしまいます。

初任給の掲載において幅をもたせるのもあまりいいことではありません。企業としては、応募者のスキルや経歴を見てから具体的な金額を決定したいというニーズがあります。ですから「18万円から25万円」といったように幅のある記載をしてより多くの応募を求めるようにします。これは一見合理的に見えますが応募する側からすれば不満の原因になります。例えば面談のうえ「採用しましょう。初任給は18万円です」といわれた方はどう感じるでしょう。「自分は最低の評価なのか」ということになります。もしかしたら本人は23万円が妥当と思っていたのかもしれません。これでは最初からモチベーションが崩れてしまいます。いったん崩れたモチベーションを復活させるのはハードです。個人的には初任給の設定には幅を持たせるべきではないと考えています。

このようにハローワークの求人票の記載内容には、ぜひこだわっていただきたいところです。もっとも求人票に記載できることには、どうしても限界があります。そこでハローワークの求人票を補完するものとして自社の採用ページを用意してください。採用ページでは、文字的な制限がないために自社の特徴を思うがまま記載することができます。そもそも求人を考えている人は、まずホームページを閲覧して概要を把握するでしょう。ホームページすら確認することなく応募してくるような人は、おそらく自社の求めるような人材ではないです。

採用ページを作成するときには、応募を意識して話を盛りすぎないように注意してください。よくあるのが「採用ページの雰囲気と現場が違う。だまされた」ということで離職してしまうケースです。なんとかして応募してもらおうという意識が強くなるほどに話を盛ってしまいがちです。これでは応募者のイメージがどんどん立派なものになっていき現実とのギャップに耐えられなくなります。採用ページの目的は、応募者を増やすことではなく自社にあった人にであうことです。いわば選考プロセスのひとつといえるでしょう。ですから可能な限り現実の勤務状況を記載するようにするべきです。「それだと人がこない」と言うのであれば、それはまず現場を変えていくほかありません。優先順位を間違っています。

求職者が採用ページでとくに意識するのは、人事評価と教育の方法についてです。とくに未経験者にとっては、「本当にやっていけるのか」という不安がどうしてもでてきます。「きちんと教えるから大丈夫」というだけであれば、あまりにも内容が漠然としていて不安を払拭することはできないでしょう。仮に育成に力を入れているのであれば、具体的にいかなる方法を採用しているかについても触れておくべきです。情報の価値としてはわずかなものかもしれませんが求職者にとっては重要な情報です。他にも子どもさんがいる方にとっては、急な発熱などにも対応してもらえるのか事前に知りたいところです。「女性にとって働きやすい職場」というぼんやりした表現からさらに一歩踏みだして具体的な制度や運用を伝えていくことになります。

入社後に定期的に声をかけていく

あたりまえのことですが入社したらいきなり組織になじむということはありません。個人の性格にもよりますが組織の一員として自覚を有するには相当の時間を要します。入社していきなり「この会社にしか自分の居場所はない」と考えるような人は、それはそれで付き合いにくい人のようにすら思えます。ですから組織のメンバーとして自覚がでてくるまで寄り添うことが離職を防止するうえでも大事です。こういった組織になじませるというプロセスは、場当たり的に実施するのではなくきちんと計画に基づき遂行されるべきものです。これを機会にいちど見直しをされてみてください。

最近では離職率を低下させるために正式な入社前にイベントを企画するところもあります。もっともここまでできる企業も少ないでしょう。現実的には入社日からスタートさせることでも十分です。むしろ「スタートの日」こそ注意する日ということになります。なにごとも最初の印象に引っ張られる傾向があるからです。初日の印象が悪いとどうしても「この会社ではうまくやっていけない」という気持ちになります。よくある事例としては、入社したのに他の業務があって放置されてしまうケースです。周囲からすれば「忙しいから仕方ない。少し待ってもらうだけ」という発想ですが、本人にとっては重大な出来事です。これだけで悪い印象を抱いてしまうわけです。ある会社ではこういった疎外感を防止するためにあえて初日は午後から入社にこだわっているところもあります。あるいは初日の昼食に社長が誘うということもあります。いずれにしても「ひとりではない」という意識を持ってもらうことが必要です。

経営者は、モチベーションという言葉を好んで利用します。モチベーションさえあれば、人は仕事にやりがいを持って取り組むという発想があるからです。ですがモチベーションというのも曖昧なものであって「モチベーションとはなんですか」と質問しても明確な回答はありません。たいていは動機とかやる気といったものです。これはたんに表現を変えただけということになります。

仮にモチベーションを動機付けと定義したとして、それをアップさせるのは至難の業です。外部的な圧力で個人の内面の問題である動機を活性化させるということだからです。それができたら誰も苦労しないでしょう。ですからモチベーションアップなんて最初から期待しないことです。

むしろ意識するべきは、モチベーションが下がらないようにすることです。誰しも入社当時はモチベーションが高いものです。それが職場環境によって次第に低下していくことになります。モチベーションには重力が及ぶために自然に下がっていくのはある意味で仕方ないことです。これを無理にV字回復させようとしたらかえって反発を受けることになります。ですからイメージとしては、この低下をできるだけゆっくりなものにしていくというものです。そうするとどこかで「この仕事は意外と面白いかもしれない」という瞬間に出会うはずです。そこからゆっくりとモチベーションは上がっていきます。

こういったモチベーションの低下を防止するうえで最も大事なのは、相手に対して興味をもつという至極当然のことにつきます。もっといえば普段から気軽に声をかけて1対1の関係を形成することです。このように人的関係ができあがっていれば、安易な離職になりません。少なくとも離職前に「少し相談が」ということでいきなり結論をだすのを防止させることができます。

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