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不正行為

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【社員の不正が発覚】ヒアリングで失敗しないためのポイント

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2023.06.02

社員の不正が疑われるときには、本人からの聞き取りが必要です。経営者は、「不正ありき」で質問をしてしまうために結果としてトラブルに巻き込まれることになります。私たちは、とかく真実を確認しようと前のめりになってしまい「適切な聞き方」を意識していません。ですが聞き取り方にミスをすれば、真実が不明になるのみならず経営者が責任を負担することにもなりかねません。そこで本ブログでは、疑念を抱いてから実際に聞き取りをするまでのプロセスについて整理をしておきます。一読していただければ不正が発覚したさいに「違法な聞き取り」と批判されることを回避できるはずです。

そもそも本人の話を聞くというのは2つの意味があります

まず不正が疑われるときに社員の話を聞くことの意義について整理しておきます。ここでの意義は、①不正行為に関する事実を確認すること②本人に弁解の機会を与えることにあります。

事実を確認するということは、おそらく誰しもイメージできるでしょう。事実が不明であれば、社員に対して責任を追及することもできません。ただここで気を付けていただきたいのは、「事実の確認」であり「真実の究明」ではないということです。私たちは、事実≒真実というように捉えてしまいがちです。ですが真実は、ある事実を前提にした個人の判断や評価を伴う概念です。ですから客観的な事象としての事実と評価・判断を伴う真実は、異なった概念です。同じ事実を目にしても人によって真実は違うものとなります。つまり当事者で協議を重ねても「ただひとつの真実」に至るわけではありません。それができないからこそ真実を決めうちする裁判システムが存在することになります。

経営者のなかには、不正を疑われる社員を相手にして「真実を聞きだす」と息巻く人がいますがたいていうまくいきません。おそらくいつまでも議論は平行線のままで「社員は真実を話さない」「社長は一方的に責め立てる」ということになります。これではあえて時間をとって社員のヒアリングをする意味がないです。余計に頑なになってしまうだけです。真実を追求するのではなく前提となる事実関係を淡々と整理していくことを心がけてください。そのなかでは当事者において争いのない部分を固めていくことから始めていきます。そこが議論の基礎になるからです。

社員からのヒアリングのもうひとつの目的は、社員における弁解の機会を付与することです。不正の疑いがあるというのは、「疑い」のレベルであり不正が確定したわけではありません。その段階で一方的に「お前が不正をした」と指摘すれば、名誉毀損あるいは侮辱という反論をされるリスクがあまりにも高いです。とある経営者は、一方的に責めたことで社員が弁護士を代理人として選任して会社の対応を批判されたこともあります。

不正の調査の過程では、必ず社員の弁解もきちんと聞くようにしています。そのときには相手の話を遮るようなことをせずに自由に話をしてもらうようにします。よくある失敗は、事前に仮説を設定してつじつまの合わないことを言いだすと「それは嘘だ」「本当のことを言え」などと責めてしまうことです。そのようなことをしていたら事後的に「社長に一方的に話を作られた」と言われてしまうリスクが出てきます。

聞きとりの前に証拠を確保しておきます

社員の不正が耳に入ったときにいきなり当事者を呼びだすのは、愚の骨頂です。あわてて証拠を消されてしまって責任追及ができなくなることもあります。ありがちなのは社員のPCのパスワードが本人しかわからずデータが消されてしまったというものです。そもそも会社のPCのパスワードを特定の人しか知らないことが問題ではありますが。

そもそも論ですが人の記憶というものほどあてにならないものはないです。本人に悪意はなくても記憶は、自分にとって都合のいいように解釈され変容していきます。ひとは、自分が渦中にいて苦しくてしかたなかった時間でさえいつか「思い出」というように距離を置いてとらえることができるようになります。これもまた事実を変容させて自分として受け入れ可能なものにしているのでしょう。

人の記憶はあてにならないからこそ、「記憶に依存しない証拠」というものがなにより大事になってきます。いわゆる客観的な証拠と言われるものです。これをどれだけ確保することができるかが決定的に大事です。本人の聞きとりは、周囲を客観的な証拠で固めたうえで実施することが効果的です。本人の聞きとりは、いわば一発勝負のような性格を有しています。何度も聞いているとしだいに相手も自分の都合のいいように話を作り上げていく可能性があります。

例えば領収書やメールといったものが客観的証拠ということになります。ただ客観的証拠にしてもひたすらたくさんの分量があればいいというものではありません。事件と関係のない資料をかき集めても証拠としての価値が高まるものでもありません。証拠は量だけではなく質も問われるというわけです。

このような説明をすると「あいつがやったことに間違いがないのに証拠が不十分だからといって責任追及できないのか」と言われることがあります。もちろん証拠が不十分であっても訴訟をすることができます。訴訟をすることができても会社が敗訴すれば、相手の思う壺でしょう。相手の責任を追及できなくなるだけではなく「言いがかりを受けた」とかえって会社の責任を追及される可能性も出てきます。経営者にはよく伝えるのですが責めるだけが経営というわけではありません。

何を聞くのかを特定しておきましょう

実際に聞きとりをするときには、事前に「何を聞くのか」についてしっかり整理してください。質問方法を整えておくということです。

事前の質問も用意せずに当意即妙に質問を繰り出していくのは、よほど慣れていないとできるものではないです。相手のペースにあわせて質問をするとぼんやりとしたことしか聞けず「なんとなく終わって何も進展しなかった」ということになります。これはみなさんも会議などで経験したことがあるでしょう。忙しいなか参加を求められてみたもののいったい何を議論しているのかさえよくわからない。やっと終わったら何も話に進展はなく次回の会議の日程だけが決まったというようなケースです。これは参加者において「何を議論するのか」という方向性が定まっていないまま会議をしてしまうからです。

不正の聞きとりにおいても「何をいかなる目的で聞くのか」についてきちんと紙に書きだしてください。とくに考えるのではなく「書く」ということが重要です。なぜなら実際に言葉にして出さないと質問の仕方ができあがらないからです。「こういうことを聞いてみよう」というだけでは、いざ緊張したなかで言葉にならないものです。僕も数え切れないくらい尋問をしてきましたが必ず言葉にして臨むようにしています。

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