コーヒーの時間
弁護士:島田 直行
投稿日:2026.10.17
先日、たたまたお客さんと喫茶店でお会いした。「お変わりありませんか」と声をかけたところ、たまたまお互いに時間があったので、ご一緒することになった。仕事の話をすることもあれば、日々の暮らしや最近の出来事について話すこともあった。特別な用件がなくても、顔を合わせて話すと、思いがけず話が弾むものである。気を遣いすぎず、ざっくばらんに話ができた。帰る頃には、何かを解決したというわけでもないのに、心が少し軽くなっていた。こういう時間を持てたことが、本当に楽しかった。
弁護士の仕事のあり方は、人によってさまざまである。若い頃の私は、こんな仕事をしてみたい、あんなことにも挑戦してみたいと、いろいろな夢を思い描いていた。けれど、仕事を続け、さまざまな人と出会い、経験を重ねるうちに、何でもできるわけではないこともわかってきた。よい経験もあれば、思うようにいかなかった経験もある。つらい思いをしたこともあった。そうした一つひとつを経て、自分がどんな仕事をしたいのか、少しずつ見えてきた。私は、限られた人たちと、必要以上に背伸びをせず、目の前の仕事に向き合っていくことが好きなのだと思う。大きく見せることよりも、きちんと話を聞き、できることを一つずつ丁寧に行う。その積み重ねの中に、自分らしい仕事があるように感じている。
老荘思想に「足るを知る」という言葉がある。人はつい、誰かと自分を比べてしまう。あの人はもっと大きな仕事をしている、もっと多くの人に知られている、もっと広い範囲で活躍している。そう考え始めると、自分が大切にしてきたものが見えにくくなることがある。比較は、自分を成長させるきっかけになる場合もある。しかし、比較にとらわれると、いつまでも足りないものを数え続けることになりかねない。自分にできることには限りがある。一定の質を保ったサービスを届けるためには、引き受けられる範囲を見極めることも必要である。自分の限界を知ることは、諦めではない。自分にできることを理解し、その範囲で誠実に力を尽くすという、前向きな選択である。せっかく出会えた人とのつながりを大切にしながら、無理をせず、自分らしい仕事を続けていきたい。コーヒーを飲んだ帰り道、そんなことをふと思った。
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