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後継者・幹部育成

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組織論の前に数字をだす

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2023.12.01

後継者に関する先代の不安のひとつとして「組織論にばかり意識を向けてしまう」というものがあります。本来であれば営業といった対外活動に尽力するべきところを人事評価といった組織の在り方についてばかり時間をかけるというものです。結果として売上活動に向ける時間が少なくなってしまいます。これでは本末転倒の結果になってしまうでしょう。実際にも後継者の方針に承服できずやむを得ず更迭したケースもあります。

本ブログでは、なぜ後継者が組織論に夢中になってしまうのかについて概要を確認したうえで組織論の改善の方向性について経験ベースでお伝えします。一読していただければ、事業改革の手順についてイメージを持っていただけるはずです。

組織論にはまるほどに労働事件が増えてしまう

一見すると矛盾するようですが中小企業では、組織論にはまるほどに労働事件が増えてしまうことがよくあります。組織論というのは、本来であれば組織の活性化を求めて展開されるものです。それにも関わらず新たな仕組みなどを導入することでかえって社員からの信用を失わせてしまうということです。

このような矛盾が生じてしまうのは、人間のモチベーションを外圧で高めることは簡単ではないからです。あらゆる組織論の目的は、社員のモチベーションを高めて定着率を上げることになるのでしょう。個別の理論は、当該目的を達成するためのいわば戦術ということになります。そこには人事評価もあれば賃金体系も含まれます。「この職場で働き続けたい」と社員に感じてもらうのは、経営者にとって代えがたい喜びのはずです。

こういった組織論は、仕組みなりを提供すれば社員のモチベーションを高めることができるということを所与の前提としています。ここにひとつの疑問があります。それは「個人のモチベーションは、それほど簡単にあがるものなのか」というものです。つまるところモチベーションというのは、ひとつの感情のようなものです。個人の感情は、まさに千差万別であり外部から容易に把握することもできません。みなさんも誰かにとってよかれと思ってした行動がかえって反感を買ってしまったということは経験としてあるでしょう。あるいは他人の助言を「余計なことを」と感じたこともきっとあるはずです。モチベーションという言葉にしても具体的に意味するところは人によって違います。そもそも「仕事にはモチベーションを見いだせない」という人も一定数いるわけです。「それはおかしい」と周囲が批判するわけにもいきません。経営者にとっては、「なぜ仕事に本気になれないのか」と理解できないところもあるかもしれません。

もちろん新たに導入した施策がうまく社員の琴線に触れるものであれば問題ありません。問題となるのは、施策を導入したもののうまく結果につながらなかったときです。このとき経営者が結果を伴わないことに不満を抱き社員を批判するようなことがあります。「うちの社員はモチベーションが低い」という経営者のネガティブな姿勢は、自ずと社員にも伝わるものです。

そういう状況で新しい組織の在り方をいくら後継者が熱く語っても社員として受け入れることはできないでしょう。むしろ「ひたすら新しいことばかり。すぐに飽きるだろう」という不信感につながっていきます。こういった不信感の積み重ねが労働事件ということで顕在化していくようになります。

後継者は優しいからこそ混乱を招いてしまう

それでは組織論における先代と後継者のトラブルについて整理していきましょう。典型的な事例としては、後継者が「これが社員のため」ということで先代のやり方を批判してしまうものです。

自社に呼び戻された後継者は、たいてい平社員からキャリアを開始していきます。経営者は、他の社員の目もあるのであえて子どもを優遇しないように注意します。後継者が社員と同じ視点で事業を目にするというのは、多面的に物事を目にするうえで重要なことです。

後継者は、将来を見据えてできるだけ社員との距離感を近づけるように努力します。そのなかで後継者は、社員から先代のやり方に対する不満を耳にすることがあります。後継者は、そういった不満を耳にすると「自分を信頼してくれている」という自信を手に入れることになります。さらには「社員のために自分が動かなければ」という義憤にかられるようになります。そこで後継者は、先代に対して既存のスタイルを批判して新たな組織論を語るようになります。

先代からすれば、こういった後継者の姿勢があまりにも危険なものに見えてしまうわけです。難しい理論を整然と述べるものの経験を伴わない理想論のように聞こえてしまうからです。とくに危うさを感じるのは、社員との関係を友達の延長のように位置付けてしまうことです。後継者が経営者になるには、「経営者と社員はいかに仲が良くなったとしても担う役割が違う」という厳しい現実を受け入れることが必要です。社員の人気投票だけで経営はできないということです。

後継者は、とかく社員から信頼されさえすれば経営はうまくいくというどこか牧歌的な考えを有しがちです。こういった活動をSNSなどであげてアピールすることもあるでしょう。そういった活動を批判する趣旨ではないですが、社員からの信頼だけで社員の暮らしを守ることができるわけではありません。ひとは、ひとつの希望を叶えてもらえれば満足するというものではないです。ひとつの希望を叶えてもらった恩義はすぐに忘却して新たな不満を口にするものです。ひとの欲望に終わりはありません。だからこそ経営者には、「ここまではできる。だがここからはできない」ときっぱり言い放つ力も求められます。後継者は、人生経験も浅いためにその線引きをすることができないわけです。結果として物申しやすい先代への批判ということになり社内に混乱を招いてしまいます。いわば後継者の優しさが混乱を招くようなものです。

経営者にはときに冷徹さも求められる

組織論というのは、経営のすべてではなくひとつの要素でしかありません。経営者として検討するべき事項は、その他にいくらでもあります。先代としては、後継者ができるだけ広い視点で経営を俯瞰できるように指導していくべきです。

そのひとつとして早い段階で営業の一部を任せることがあります。いかに立派な会社であっても売り上げがなければ事業を維持させることができません。社員の暮らしを守ることもできません。ある方が「売上さえあげることができれば、社内の問題も解決していく」と言っていました。暴論のようにも聞こえますが一抹の真実とも言えるでしょう。現実的にもいかに立派な人事評価を実現しようとしても売上が下がれば、社員のモチベーションを維持することが難しくなります。「売上があがらないから賃金もだせない。でも評価はきちんとしているから頑張ろう」と言われて納得できるひとなどいるわけがないです。

実際に営業をしてみると後継者は、たいていうまくいかないものです。組織論は自分の采配だけで自由に変えることができます。これが営業では自分だけではどうしようもないところがあります。ときには不条理だと感じつつも頭を下げないといけないときもあるかもしれません。こういった不条理の経験こそ後継者を強くしていくことになります。営業を通じて売上を実現することの難しさを身に染みて感じることで社員とのかかわり方も変わってきます。同時に他の社員も「後継者は口だけではない。自分で動いて数字をだしている」と感じるようになり本当の意味での信頼にもつながっていきます。こういった素地ができてはじめて後継者による組織改革がうまくいくことが多いものです。先代の皆様は、その点を御自分の言葉で後継者に語り続けてください。

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