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ハラスメント

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大変なクレーマーの対応。それって誰の問題なの

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.02.25

本やセミナーで何度も言っていることですが「クレーマー対応が好きです」という猛者はいまだ見たことはないです。クレーマー対応が上手と評価される人はいても「好き」とまではなかなか達観できないものです。どうしてもクレーマー対応は、現状の課題を解決することが喫緊のテーマになってしまい将来に向けたダイナミックな発想というものにならないのです。「とりあえずこのお客さんをどうしよう」と慌ててしまって全体の思考ができなくなってしまうわけです。この分野で長年身を置いていする僕ですから「うわー」という気持ちになることが多々あります。そんなものです。

クレーマー担当者の辛いのは、「上手だ」と周囲から評価されるといつまでも同じポジションに置かれてしまうことです。クレーマー担当者は、「この難局を超えればもっと経営に深く関与できる。昇進できる」と期待して自分のモチベーションを維持しています。それが頑張ってうまくいくほどに「ありがとう。助かるよ」ということで同じ業務を永遠とさせられる。そしていつのまにか「クレーマーの問題だからよろしく」と言うことになってしまいがちです。「余人をもって代えがたい」というのは言葉の響きとしてはいいものの内容としては無意味です。経営者のそういうったスタンスは意外と見られているものですから気をつけてください。

これは個人ではなく組織としての問題です

世の中にはクレーマー対応の本やセミナーって数え切れないほどあります。業務に関するので参考にさせていただくことが多いです。どれも「なるほど」と勉強になるものばかりです。ただ個人的にはもうちょっと広い視点でとらえる必要もあるのではないかと感じています。

本などで紹介されているのは、「どうすればクレーマーに満足してもらい要求を押さえ込めるか」ということです。簡単に表現すればクレーマーへ対抗するためのノウハウ集のようなものです。話し方、謝罪文の書き方、電話のかけ方など。ここで共通するのはいずれも個人としてのスキルなんです。経営者も自社のクレーマー対応のレベルを上げる≒担当者の対応レベルを上げるととらえてしまいがちなんです。ここに大きな問題があると考えています。

個人のスキルを高めることばかりにフォーカスするとクレーマー対応がまるで担当者個人の問題のように誤解されてしまいます。経営者から「なんとかしとけ」と言われるとまるで自分の責任のように感じて「自分でなんとかしなければ」ということになってしまいます。そもそもクレーマーと取引関係にあるのは、社員個人ではなくあくまで法人です。ですからクレームの対象は、いかに社員にミスがあっても会社という組織に対するものです。いかなる場合であってもクレーマー対応は、個人ではなく組織で対応するというのが鉄則です。

分断させて責めるのはクレーマーの常套手段

組織としてクレーマー対応に準じるからこそ力強さがでてきます。これをクレーマーの視点から見れば正直困るわけです。どうしてもクレーマーは個人であるため交渉相手が組織だとやりにくい。自分の攻撃する対象が分散してしまってなかなか自分のプレッシャーを与えることができなくなるわけです。できれば特定の個人に自分のパワーを集約させて攻撃したいわけです。

そこでクレーマーは、戦略の常套手段である「分断」を狙ってきます。組織の問題ではなくて「特定の社員のミスであり、そのものが責任を取れ」ということに話をすり替えます。なかには「担当者を解雇させろ」とかまで言いだす人もいます。知らず知らずのうちに社員個人の問題のようになってしまう。そして社員が「自分の責任だ」と感じるようになるとクレーマーの思うつぼです。いったんそういう自責の念に駆られた人を動かすのはある意味で簡単なわけです。小さな責任をまるで大きな責任のように演出すれば自分の思うように動きだすからです。クレーマーが社員を分断させるパターンは、直接的方法と間接的方法のふたつがあります。

直接的方法とは、問題を引き起こした社員に対して直接「自分の問題だからなんとか自分でしなさい」と言わば外圧的に影響を及ぼす方法です。「社会人だから」「組織に迷惑をかけないよう」などと繰り返し言い続けることで「やはり自分でなんとかしなければ」という気持ちにさせていきます。とにかく他の社員には相談するなともクレーマーは言いますね。これも分断させて孤独な状況にさせるためです。

間接的方法とは、組織に対してプレッシャーをかけて組織内における社員の立場を意図的に不安的にさせる方法です。いくら会社から社員に「大丈夫だ」と言ってもまじめな社員ほどクレーマーが組織に対して執拗な要求をしてくるのを目にすると責任を感じます。クレーマーは、組織に対するクレームにおいて固有名詞をよく利用します。「おたくの○○の対応は」という感じです。もちろん単純に社員のミスであれば会社として謝罪をして終わるものです。ですがクレーマーは、腹の虫がおさまるまで永遠と組織に不満をぶちまけます。「どこまでお客さんは偉いのか」と思わずつっこみたくもなります。でも社員としては悲惨な状況を見るほどに「自分のせいで。それなら責任も自分で」ということになってしまいます。こわいですね。

組織内での事前の共通認識を持つべきです

こういった分断の魔力に引っ張られないためには、「クレーマーは孤独にさせる」ということを社員のすべてが認識しておくことです。知っておけば「この人は自分を組織から切り離そうとしている」と冷静に相手を眺めることができます。事前に何かを知っておくことは危機的な状況ほど役に立つものです。その意味では個人のスキルを高める学習の前にまずは社員全員を集めて「クレーマーは組織の問題だから。分断の戦略にははまらないように」ということをしっかり教育しておくべきです。そうすることで担当社員が犠牲になるリスクを相当軽減させることができます。日本の企業研修では、このマインドセットがあやふやな場合があまりにも多いのです。

知っていることはチカラなんです。

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