つながりのなかにこそ愛情がある

投稿者:
島田 直行(弁護士)
2021.06.11 経営者の方々へ

6月1日に開業11周年を無事に迎えることができました。これも事務所を支えていただけるみなさんがいらっしゃってのことです。ありがとうございます。僕は,母子家庭で育ち人脈や知名度というものがまったくありませんでした。それでも「自分の事務所をかかげたい」という意欲に駆られて独立したという感じです。計画もいろいろたてたのですが現実は計画通りにいきません。「こんな立派な事務所を作りたい」と夢は広がっていましたが手元の預金通帳の残高が許してくれるわけもなく「このくらいの備品から」と理想からはずいぶん譲歩したものとなりました。かっこよく言えば夢と現実に折り合いをつけるということです。今でも事務所の内覧にスタッフと訪問した日のことは明確に覚えています。初夏の澄み切った青空の色彩を取り込んだような海峡が眼前に広がる。「ここだ」と直感して決めました。提示された賃料には少したじろぎましたが。

 開業すれば仕事が来るというのは幻想です。今でこそご紹介だけで事務所を回していますが開業時に紹介なんてまったくありません。ですから電話が鳴ることがなんとうれしかったことか。たいてい営業でしたが。仮に相談があっても開業して間もないと知られると「今回は別の方に」と言われたこともたびたびありました。依頼者としては,やはりキャリアのある方に依頼したいでしょうから仕方のないことです。「仕方のないことだ」とわかっていてもやはりメンタル的にはくるものがありました。結局のところ独立したら認めてもらえると安易に考えていたら,現実は真逆。独立したらすべて否定されたという状況でした。いろいろマーケティングの本も手にしたわけですが自己満足で終わって結果にはつながりませんでした。開業してしばらくすれば少しずつ相談も増えてきました。ですがまだまだ自分のなかでは迷いや不安といったものがありました。士業の方であれば共感していただけるでしょうが費用の説明をすることすら緊張するわけです。「若いのに高いと言われないか」など。カタチなきものを売る商売ですから値付けというのは本当に難しいわけです。なんど手を震えながら見積書をだしたことやら。

 そんな悶々とした状態を変える転機になったのがK会長との出会いです。会長からは,経営者の基本的なマインドのようなものを教えていただきました。開業して間もない頃にこういったマインドを教えていただけたことは本当にいい経験でした。そのなかでもとくに強調されていたのが「ひとを大切にする」ということです。僕らは,「ひとを大切にする」ということを人生で何度も教わるはずです。ですが現実には必ずしもそうはなっていない。気が付かないうちに誰かを傷つけていることもたびたびあります。だからこそ経営者として日々自覚しないといけないことでしょう。僕は,スタッフがいくら若くてもすべて「さん」づけです。あたりまえのことですが,あたりまえのことをあたりまえにすることがまさに人を大切にするということだと自分なりに理解しています。

 こういった姿勢はクライアントとの関係においても同様です。現状にて事務所における事件は,既存のクライアントからご紹介いただいたものばかりです。「ホームページをみて」「電話帳でさがして」といったいわゆる飛び込みの案件は,年に1件もないような気がします。まさにクライアントの方々とともに作り上げていくという希有な法律事務所に成長することができました。クライアントの方から「私は島田法律事務所の営業になりますよ」と言っていただけることもあります。そういった言葉をいただけることが何よりの報酬です。

 僕は,クライアントをひとりの「ひと」として接したいといつも考えています。とかくマーケティングなどに頼りすぎてしまうと売上数字ばかりを意識してしまいクライアントの顔が見えなくなるリスクがあります。そういった経営は僕として望んでいません。そんな方法で売上を目指しても楽しくない。クライアントという漠然とした関係でなくひとりの友人のような関係になりたいと常に考えています。困ったときに「ちょっと相談のって」とお互い気軽に声をかけることができるような関係です。つながりのなかにこそ伝わる愛情はあります。だからこそひたすら数字を求めるのではなく,ひとつひとつのつながりを育てていき事務所を発展させたい。それが僕なりの仕事観です。そのためにはみなさんの支援が必要です。これからも変わった法律事務所をよろしくお願いします!