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ハラスメント

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クレーマーの用意する3つの罠。罠にはまったことすらわからない

島田 直行 弁護士:島田 直行 投稿日:2021.02.04

クレーマー対応は誰にとっても心痛なものだ。「クレーマー対応が好きです」という人には会ったことがない。生業にしている僕にとっても同じ。一般の方にとってはなおさらだろう。事務所に持ち込まれるご相談にしてもたいてい経営者と担当者の方が疲弊した状況からすべてがはじまる。こういった疲弊状況に陥っている場合には、自分の置かれた状況を冷静に捉えることすら難しくなる。「とにかくつらい」という感覚が先行してしまい自分が何を恐れ疲れているのかがわからない。クレーマーは、自分の要求を実現するために相手のために罠を用意している。まくし立てるように発言するなかで静かに罠をセットしている。それは意図的な場合もあればそうでない場合もある。いずれにしても担当者は知らず知らずのうちに罠に足を入れてしまい抜けだせない状況になってしまう。そう「抜けだせない」というのがある意味でもっとも人間の精神を蝕んでしまう。罠にはまらないためには、まず罠の仕掛けを理解しておかなければならない。そこでクレーマーの用意する3つの罠について整理しておこう。

1 組織ではなく「あなた」個人の問題へすり替える

クレーマーは、交渉においてできるだけ相手より優位に立ちたいものだ。クレーマーは、基本的に個人。いくら声を荒げてしつこく対応しても相手が会社や団体といった組織では自分の意見を押し通すことが難しい。せっかく担当者を威圧できたと感じても担当者が変更されたらまた同じことの繰り返しだ。そこでクレーマーは、可能な限り組織から担当者個人を切り離したうえで「個人の問題」へと話をすり替えてしまうことが少なくない。

担当者にしても頭では「これは会社の問題であって自分の問題ではない」とは理解しているはずだ。ただ理解していても身体が応じて動くとは限らない。なんども「あなたの問題だ」と言われ続けると「もしかしたら」と自分に疑念を抱く。いったん内面に発生した自分への疑念を自力で払拭することは決して容易なことではない。なんというか底なし沼に陥るようなもの。

ある会社の担当者はクレーマーから「搬送中に廊下に傷を付けたのはお前の責任だ。社会人なら会社に報告せずに自分で解決しろ」と無茶なことを言われて個人で多額の費用を支払うことになった。しかも要求はさらにアップしていくばかりだった。こういうクレーマーは、いったん個人が自分の指示にしたがうとなればとことん要求を繰り返す。自分の正義を語るような者や上から説教をしたがる者がクレーマーには多い気がする。社会において自分が正当に評価されていないフラストレーションを不当なクレームという形式で解消しているのだろう。

担当者にしても「服従することで楽になる」という思いもどこかにある。クレーマーにしつこく言われ続けると「応じた方が早い」と判断するのであろう。だがいったん服従するとすべてを失うまで話は終わらない可能性がある。

2 問題を拡大解釈して別のストーリーにする

クレーマーは、問題を拡大解釈したうえで相手に提示することがある。ちょっとしたミスでも大きなミスのように指摘して過大な要求をしてくる。こういった場合には担当者としても「あまりにも要求が過大だ」と内心ではわかっている。わかっているものの「お客様だから」ということでただひたすら黙って聞いてお詫びするだけになってしまう。クレーマーを目の前にして「それは対応できません」と回答するのは言葉でいうほど簡単なことではない。興奮した状態の相手を目の前にすれば「なんとか場を鎮めよう」と思うのが一般的な発想だろう。そんな状況で「申し訳ないです。ですが要求には応じることができません」ではかえって火に油を注ぐことになるのではないかと不安になって口からでてこないものだ。

担当者からすれば問題が拡大解釈されているということすら気がつかないことがある。法律相談のなかで「それは明らかに不当な要求でしょ」と指摘すると「本当ですか」と驚かれることがある。それほど心折れた本人は冷静な判断ができなくなっているという証左であろう。あたりまえだが顧客だからといってなんでも要求することができるわけではない。責任には有無と範囲というふたつのベクトルがある。仮に責任があったとしても無制限の責任を負担するものではない。とかく「お客様だから」と考えていたら無制限の責任を負担することになりかねない。

3 第三者を巻き込んでしまう

クレーマーのなかでもとくに悪質なのは、会社に要求しても無理だと判断すると取引先やフランチャイズ本部など関係のないところまでプレッシャーをかけることだ。人は背後からの矢には防ぎようがない。クレーマーに毅然とした態度を取っていても「こんな連絡がうちにもあった。おたくのことだから迷惑かけないで」と第三者から言われると対応に苦慮することになる。

こういうときに第三者も「大変そうだね。気にしないで」と言ってくれたらベストだが人間社会はそれほど善意にあふれたものではない。むしろ「とにかくこちらに迷惑かけないで」というつれない指摘だけ受けてしまうのが一般的だ。「クレーマーだからともに協力しよう」というのがあるべき企業態度ではあるがなかなか自分事でなければ本気になれないものだ。結局取引先に迷惑をかけることができないとクレーマーに対して弱腰になってしまうとすべてが崩れてしまうことになりかねない。

誰にとっても第三者を巻き込んでしまうのはつらい。巻き込まれた方にしても「なぜ自社が巻き込まれる必要があるのか」と苛立ちもあるかも知れない。でもそういった「自分さえ良ければ」というのがクレーマーをのさばらせているのも社会の課題のひとつであろう。

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