カスハラ対策の本質
弁護士:島田 直行
投稿日:2026.09.27
10月1日から、カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」への対策が企業の義務となります。
最近はカスハラ対策に関するセミナーも増えており、多くの企業が準備を進めているところだと思います。
会社としての基本方針を明確にすること、相談窓口を整備すること、実際にカスハラが起きた場合の対応方法を決めておくことなど、企業が取り組むべきことはいくつもあります。
必要に応じて、就業規則や社内規程、マニュアルなどを見直す企業もあるでしょう。
カスハラという問題が社会的に認知され、企業として対応すべき問題として法律上も明確に位置付けられたことは、とても大きな意味があると思っています。
法律の詳しい内容については、ここではあえて触れません。
僕が今回の制度改正で一番大切だと感じているのは、「社員を守る」ということが、会社にとってより明確な責任として示されたことです。
これまでカスハラ対策というと、どうしても「悪質なクレームにどう対応するか」という話になりがちでした。
もちろん、それも大切です。
ただ、本質はもう少し別のところにあるのではないかと思うんです。
それは、「何かあったときには会社があなたを守ります」という姿勢を、社員にきちんと示すことです。
かつては、「お客様は神様です」といった言葉に象徴されるように、顧客第一主義が強く求められる時代がありました。
顧客を大切にすることは、今でも企業経営の基本です。
一方で、顧客を大切にすることと、理不尽な要求から社員を守ることは両立します。
最近は、「まず社員を大切にしなければ、良い会社にはならない」と考える経営者も増えてきたように感じます。
僕自身、それはとても健全な変化だと思っています。
企業の強さ、とりわけ組織の強さというものは、結局のところ人と人とのつながりから生まれます。
時代とともに働き方は変わりますし、会社と社員との距離感も変わっていくでしょう。
それでも、一人の社員を大切に思うことが組織づくりの出発点であることは変わりません。
カスハラ対策についても同じです。
立派なマニュアルを作る。
相談窓口を設置する。
規程を整備する。
研修を実施する。
どれも必要なことです。
ただ、その前提として、「社員一人ひとりを会社として守る」という明確な意思がなければ、制度だけを整えても十分ではありません。
社員が困ったときに会社が前に出る。
理不尽な要求を受けたときに、一人で対応させない。
必要であれば、会社として顧客に「そこまでは応じられません」と伝える。
そうした日々の姿勢の積み重ねこそが、本当の意味でのカスハラ対策なのだと思います。
今回の法改正を、単に「新しい義務が増えた」と捉えるのでは少しもったいないです。
これを機会に、自分たちの会社は社員をどう守るのか。
社員に対してどのような姿勢を示すのか。
そこを改めて考えるきっかけにすることの方が、ずっと大切なのではないでしょうか。
「この会社は、いざというとき自分を守ってくれる」
社員がそう感じられる会社であること。
それこそが、これからの企業に求められる強さの一つなのだと思っています。
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